はじめに
初夏の風物詩、ホタルが舞う季節になると、米地川周辺では、夜にたくさんのホタルが乱舞する幻想的な風景を見ることができます。それは豊かな自然が育んだ贈り物でもあります。それゆえ、地域の人々は河川の愛護活動や水質保全、清掃活動を欠かすことなく日常生活の一部分として取り組んでいます。
ホタルが生息している自然豊かな水辺は、私たち人間にとっても大切な場所です。今後も観賞に来られるお客様と共に、ホタルの生態をよく理解してこの貴重な贈り物を未来へ届けたいと思います。


ホタルの棲む米地川について
ゲンジホタルは、水がきれいな高い山地などの清流に棲むと言われています。
有機毒物が少ないアルカリ性の水であることも重要な条件のようです。
ホタルが一生を過ごす米地川は、山中川と高中川が合流する地点に位置します。標高が106mから86m地点(国土地理院)にあり、水がゆるやかに流れる中間点に位置することから、幼虫のエサとなる「カワニナ」が棲む環境に適した川であると言えます。この水質を守るため、継続的に美化活動を行っています。
また夜間、直接光が当たる環境では、幼虫の上陸が阻害されたり、成虫が活発に活動しないことがあります。ホタルの時期には周辺の街灯を減光し漆黒の闇に近く、訪れるカメラマンにとっても格好の穴場スポットになっています。
- 2006年、台風23号の豪雨によりホタルの幼虫やカワニナが流され壊滅状態となりました。その当時行っていたほたる祭りを2年間中止し保護活動に取り組んだ結果、2008年には復活することができました。




ホタルの生態
ホタルの生息条件
- 水質:よどみがなくきれいなこと
- 水深:長靴で入れる深さ(10~30㎝程度)
- 水流:あまり早くないこと
- 濁り:工業用水、家庭用水、動物の糞尿、工事によるにごりは禁物
- 川幅:1.5~3mくらいで、小石や水藻が多いこと
- 河岸:川の周りの高木により木陰ができ、やわらかい土で草に覆われていること
- えさになるカワニナが生息していること
生息するホタルの種類
奥米地に生息するのは、主に「ゲンジボタル」「ヘイケボタル」「ヒメボタル」の3種類です。気温が暖かい時期ほど早く見られ、その日の天候によって随分違ってきます。雨や風の日は、川辺の草むらに隠れて動かなくなります。湿度が高く穏やかな日にたくさん見られます。



ホタルの特徴 | ゲンジボタル | ヘイケボタル | ヒメボタル |
---|---|---|---|
大きさ・かたち | 15mm前後 頭に黒い十文字の線 奥米地を代表するホタル | 10mm前後 頭に黒い縦の線 | 5~9mm前後 |
飛ぶ時期 | 5月下旬から6月下旬 | 6月下旬から8月下旬 | 7月から8月 |
産卵 | 一匹で400~500個を産卵 卵の大きさは0.5mm前後 | 一匹で50~100個を産卵 卵の大きさは0.5mm前後 | |
幼虫時のえさ | カワニナ | カワニナ・タニシ | カタツムリなど陸生の貝類 |
飛び方 | 飛んでいるのはほとんどがオス。 約20mの上空まで飛ぶことがある。 メスは草陰の川面にいることが多い。 | 飛んでいるのはほとんどがオス。 池や水田から約10mでゲンジボタルと比べると低空飛行。 | 林の中 湿地 |
光り方 | 奥米地では、約3秒光って3秒休む。(諸説あり) | ゲンジボタルより光る時間が長く、光り方が不規則で幽霊ボタルとも呼ばれている。 | 早い点滅。 光り方が規則正しく分かりやすい。 |
発光器 | 化学反応で光るので熱くない。 | 化学反応で光るので熱くない。 | 化学反応で光るので熱くない。 |
光る理由 | 求愛行動・敵を驚かせる・刺激に対する反射 | 求愛行動・敵を驚かせる・刺激に対する反射 | 求愛行動・敵を驚かせる・刺激に対する反射 |
名前の由来 | 源氏物語の光源氏から名付けられた。(諸説あり) | ゲンジボタルより光が弱く小さいため源氏に滅ぼされた平家に由来している。(諸説あり) |
ホタルの一生
- 冬の時期には、幼虫たちは川底の石の下でじっとしています。
- 4月下旬になり、水温が13℃以上になると雨の夜に上陸してきます。
- 上陸した幼虫は、土にもぐります。
- 土のなかでサナギになる準備をします。サナギの期間は約3週間と言われています。
- 土のなかで脱皮を繰り返して羽化します。
この時期を狙って、6月の第一週くらいに≪ほたるの夕べ≫を開催しています。 - 6月下旬ごろからコケや草に産卵。
成虫の寿命は約10日間だと言われています。6月下旬には水辺のコケや草に産卵して最期を迎えます。 - 7月中旬産後約1カ月でふ化。カワニナを一匹あたり40~50匹食べると言われています。
ホタルの増殖活動
ホタルの生息を守るため、当地区では自然保護、ホタルの保護と合わせて、増殖するための活動も行っています。




繁殖箱の中にホタルの幼虫とカワニナを入れ育てています。
カタカナの「ホタル」は、飛び交う虫をイメージしたもの。
平仮名の「ほたる」は、奥米地の自然資源全体を総称するものと考えます。
したがって「ほたるの館」は平仮名表記となっています。